発咳について
ペットの「咳(発咳)」について
(昨年公式ライン@で連載した記事のまとめです)
〜よくある咳から、注意が必要な咳まで〜
「最近、うちの子が咳をするんです」
秋から冬にかけて、動物病院でとても多く聞くご相談のひとつです。
**発咳(はっがい)**とは、簡単に言うと「咳」のこと。
咳といっても、
・1日に1〜2回、たまに出る軽いもの
・1日中続いているような重いもの
まで、その程度はさまざまです。
また、咳の原因もひとつではありません。
風邪のような一過性のものから、感染症、体の構造的な問題、心臓や肺の病気まで、本当に幅広い原因があります。
この記事ではまず、飼い主さんが日常でよく遭遇する「大きな病気が背景にない咳」についてお話しし、その後に注意が必要な咳の原因を順番に解説していきます。
秋は「咳が出やすい季節」です
中医学では、五行という考え方があり、**秋は「肺の季節」**とされています。
つまり、肺や気道のトラブルが起こりやすい時期ということです。
秋になると
・空気が乾燥する
・花粉や黄砂、ホコリが舞いやすくなる
本来、潤いが必要な気道の粘膜が乾燥し、防御力が下がってしまいます。
その結果、咳が出やすくなるのです。
咳は「悪者」ではありません
咳は、
気管や肺に入ってきた異物(ウイルス・細菌・ホコリなど)を外に追い出すための防御反応です。
ところが、
・気道が乾燥している
・空気が汚れている
このような状態では、異物をうまく排出できず、気道に留まってしまいます。
すると炎症が起こり、その炎症によってさらに咳が増える……という悪循環に陥ります。
よくある「重大な原因がない咳」の対策
特に重い病気が隠れていない場合、飼い主さんにぜひ意識してほしいポイントが3つあります。
① 空気を「潤す」こと(加湿)
加湿器などを使い、空気の乾燥を防ぎましょう。
気道の粘膜が潤うことで、異物を排出しやすくなり、咳の予防につながります。
② 空気を「きれいにする」こと(空気清浄)
空気清浄機を使うことで、ホコリや花粉などの異物の量を減らすことができます。
人の場合、外出時にマスクをすることである程度異物を防げますが、
犬や猫はマスクができません。
ただし、1日の大半は室内で過ごします。
だからこそ、おうちの中だけでも、きれいな空気を吸える環境を整えてあげることは、咳の予防にとても効果的です。
③ 体を「冷やさない」こと(保温)
免疫細胞は、ある程度の暖かさがないと十分に働けません。
体温が高めの人のほうが病気になりにくい、という話を聞いたことはありませんか?
これも免疫の働きの違いによるものです。
目安としては、
「人がTシャツ1枚でちょうどよい」と感じる室温を保ってあげるのがおすすめです。
(電気代のことは…悩ましいところですが)
犬と猫の「寒さ・暑さ」の考え方
一般的に、
・猫:暑さに強く、寒さに弱い
・犬:寒さに強く、暑さに弱い
と言われています。
でも、「強い=快適」ではありません。
どんな動物でも、やはり快適な温度が一番です。
さらに、人と一緒に暮らすペットたちは、年々「野生的」ではなくなっています。
秋口から
・暖房
・加湿器
・空気清浄機
を使ってあげることは、過保護ではなく、立派な病気予防だと思います。
ちなみに、
「冬でも暖房を使わずに過ごさせたい」という場合は、
飼い主さんも同じ環境で、Tシャツ1枚で過ごしてください。
自分だけ着込むのは反則です。
受診の目安について
環境を整えて、
・日を追うごとに咳が減っていく → ひとまず様子見でOK
・4〜5日経っても改善しない
・むしろ咳が増えている
このような場合は、一度動物病院を受診してください。
気管虚脱・気管低形成による咳
次に、体の構造的な異常による咳についてです。
気管とは?
気管は、喉から肺まで続く「空気の通り道」です。
洗濯機の排水ホースのような、ジャバラ状の構造をイメージしてください。
輪っか状の軟骨が連続し、その間を柔らかい組織が支えています。
気管低形成と気管虚脱
軟骨が薄く、輪っかの形を保てない状態を気管低形成といいます。
この部分は、呼吸のたびに潰れやすく、炎症を起こして咳が出ます。
さらに、
・強い咳
・興奮
などで陰圧が加わると、潰れた状態が戻らなくなります。
これが気管虚脱です。
見分けるポイント
喉のあたりを軽く触って、すぐに咳き込む場合は、気管低形成が疑われます。
ただし、小型犬では比較的よく見られる状態で、
すぐに治まる咳であれば問題ありません。
しかし、
・「ガーガー」「アヒルの鳴き声」のような呼吸音
・咳が止まらず、起きている間ずっと出ている
これらは放置してはいけません。
低酸素や呼吸困難につながる可能性があります。
心臓病による咳(肺水腫)
心臓が原因の咳は、肺水腫という状態であることが多く、
緊急性が高いと考えてください。
肺水腫とは、肺(肺胞)に水が溜まる状態です。
酸素と二酸化炭素の交換ができなくなり、
・咳
・呼吸数の増加
が起こります。
呼吸数の目安
健康な子の安静時呼吸数:
👉 1分間に15~20回程度
肺水腫が疑われる状態:
👉 1分間に40回以上
咳が出ていて、呼吸数が40回以上見られる場合は、すぐに受診してください。
喘息による咳(猫に多いが犬でも起きます)
喘息は免疫異常によるアレルギー疾患です。
猫の咳では、喘息が原因であることが非常に多いです。
特徴は、
・乾いた咳
・何日も、何か月も続く
・重度になると1日中咳をする
重度の喘息を放置すると、肺水腫に移行することもあります。
診断にはレントゲン検査を行いますが、
見た目だけでは判断できないことも多く、
ステロイドによる試験的治療で反応を見ることもあります。
治療は、
・ステロイド
・免疫抑制剤
・自然療法
などから、飼い主さんと相談して決めていきます。
咳の原因としての「肺がん」
肺がんは非常に厄介な病気です。
咳が出た時点で、進行していることがほとんどです。
内臓のがんは、
・レントゲン
・超音波
・血液・尿検査
などの定期検査を行わなければ、早期発見が難しいのが現実です。
検査には費用がかかりますが、
病気になってからの治療のほうが、さらに大きな負担になります。
まとめ:日常観察と環境づくりが大切です
・空気を潤す
・空気をきれいにする
・体を冷やさない
・咳の頻度と呼吸数を観察する
これだけでも、守れる健康はたくさんあります。
「いつもと違うな」と感じたら、
早めにご相談くださいね。

